医局活性化プロジェクト対談 第20回
東京慈恵会医科大学 救急医学講座
東京慈恵会医科大学 救急医学講座 武田 教授にお話しをお聞きしました。
2022.6.6
東京慈恵会医科大学 救急医学講座の特徴を教えてください。
当講座は、本院、葛飾医療センター、第三病院ではER、柏病院では救命救急センターを運営し、附属病院ごとに地域に密着した救急医療を展開しています。
●本院〈ER〉/都心中央に位置し、救急車・walk in区別なく、全ての患者さんを救急外来で受け入れる北米型ERのパイオニアです。各科の全面的協力の元、全ての患者さんの救急初期診療に従事しています。都内でも有数の症例数があり、軽症から重症まで幅広い疾患に対応しています。
●柏病院〈救命救急センター〉/東京のベッドタウンにあたる中核都市を支える救命救急センターであり、医療圏唯一の大学病院です。初療から手術、ICU/HCU管理まで一貫して対応しています。地域の救急医療を支えるために積極的に一次救急、二次救急の患者さんも受け入れ、幅広い救急対応を実践しています。
●第三病院〈ER〉/狛江市、調布市、および近接する世田谷区にまたがる北多摩南部医療圏のニーズに対応した急性期病院です。院内各科・各部門の協力を得ながら、救急車搬送患者さんと近隣医療機関からの紹介患者さんの受け入れを積極的におこない、地域の救急医療を支えています。
●葛飾医療センター〈ER〉/葛飾区を中心とした区東北部医療圏の中核を担う地域密着型の病院です。救急部は「24時間365日稼動する外来」「断らない2次救急」「総合診療システム」をコンセプトとし、地域病院としての機能と中核病院としての機能を両立するべく、地域に根差した救急医療体制の確立を目指しています。
救急科専門医プログラムについて教えてください。
本プログラムは、4つの附属病院と南多摩病院での研修をおこないます。救急医療は、地域性と密接な関わりがあり、社会性を帯びた分野です。ERと救命救急センターの両方を運営している救急医学講座は珍しく、本プログラムは、都心型救急医療と地域救急医療、ER 型救急研修、救命センター研修を含み、一次救急から三次救急まで幅広い救急医療を学べるプログラムとなっています。“東京都の現在”を実感しながら、軽症から重症まで幅広い患者さんを診療・管理できるスキルを身に付け、救急疾患に対してジェネラルに診療をおこなえる、他科の医師からも頼られるような救急科専門医を育成します。ER型希望、救命センター希望、循環器希望、家庭医希望など、個々の希望に合わせた研修も柔軟に対応可能です。
救急隊活動を中心とした病院前救護、救急搬送および病診連携、さらに災害時の対応にも関与することで、地域全体の救急医療に関して中心的な役割を担う医師を目指すこともできます。当講座には若手の救命医も多く、非常に活気のある講座です。フレンドリーな雰囲気の中で、新しい救命医療を一緒につくっていきましょう。
ワークライフバランスの取り組みについて教えてください。
個々のライフスタイル、ライフイベントに応じた柔軟な働き方が可能です。ERは完全シフト制としており、オン・オフがしっかりある勤務体制となっています。救命救急センターは、日中はICU当番、三次救急当番、二次救急当番の当番制としており、当直明けは必ず11時までに帰宅、土日勤務の代休取得など、業務過多にならないよう工夫しています。
これまでに産休・育休の取得、時短勤務、当直フリーの実績も多数あり、多くの女性医師が活躍しています。
救急医療現場でのICT活用について教えてください。
東京慈恵会医科大学 先端医療情報技術研究部と協働し、救急医療現場でのICT活用に取り組んでいます。一刻を争う救急医療現場において、病院前の情報をいかに早く病院内の救急医やさらにその後の専門治療を行う専門医につなぐかが、患者予後の改善につなげるために重要です。専用アプリを用いて救急隊と病院が病院前の段階から連携することで、急冠症候群・脳卒中の病院前現場でのトリアージをおこなったり、搬送中の傷病者情報をリアルタイム共有することができます。これにより、患者到着前から治療の事前準備を進めることが可能となり、患者到着後は直ちに最適な治療を開始することができます。
武田教授、ありがとうございました。